2012年01月18日

大飯原発:「見切り発車」批判続出…3、4号機安全評価

大飯原発:「見切り発車」批判続出…3、4号機安全評価

 関西電力大飯原発3号機、4号機の安全評価(ストレステスト)について、経済産業省原子力安全・保安院が妥当とする審査書案をまとめ、原発の再稼働に向けた動きが本格化した。だが、東京電力福島第1原発事故をめぐる政府などの最終報告書が出ない段階でのゴーサインに「結論ありき」「見切り発車」との批判は多い。再稼働の最大のハードルである地元自治体の理解をどう得ていくのか。電力需要が山場を迎える夏を前に、課題は多い。

 「原発の安全性をどう評価できるのか」「市民の傍聴席を別室に設けるのではなく、直接議論を聞かせるべきだ」−−。関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を審議するため、18日の経済産業省原子力安全・保安院のストレステスト意見聴取会では、保安院の審議の進め方や評価を巡って、市民団体らが抗議、予定通り開会できない異例の事態となった。

 ストレステストを再稼働の可否に使うことには、原子力の専門家からも疑問の声がある。諸葛宗男・東京大特任教授(原子力法制度)は「ストレステストは、(炉心損傷のような)過酷事故が起こるまでどのくらい余裕があるのかを推定するためで、安全を保証する合格点というものはない」と話す。

 東京電力福島第1原発の事故後、欧州連合(EU)もストレステストを実施しているが、原発の安全性を判断する基準は示さず、EUの担当者らは「合格点」は規制当局の判断で決めるしかないと指摘した。保安院は審議で、「福島原発事故級を再び起こさせない」ことが基準と主張した。だが、そのための保安院の緊急安全対策は、原発を持つ電力会社などが昨年実施し、実質不合格はないことになりかねない。

 一方、現在の耐震指針に基づく電力各社の地震や津波の想定の妥当性について審議が終了しているのは、東京電力柏崎刈羽1号機と同5〜7号機、高速増殖原型炉「もんじゅ」、日本原燃の再処理施設のみ。福島第1原発事故の知見もまだ反映されていない。福島第1原発では、最大5.7メートルの想定をはるかに上回る津波に襲われ、事故につながった。

 ストレステストに関する保安院の意見聴取会委員、井野博満・東京大名誉教授(金属材料学)は「どこまで余裕があったら合格という判断基準がないまま、評価結果を出すのはおかしい。福島第1原発事故で得られた知識を取り入れた上で、安全評価し直すことが先で、再稼働ありきの結果だ」と憤りを隠さない。諸葛さんは「想定外の事故が起きても、適切に機器や職員を動かすことができるのかを含め、総合的に安全評価すべきだ」と警鐘を鳴らす。【河内敏康】
 ◇再稼働「最後は政治判断」

 電力7社が保安院に提出したストレステストの1次評価の報告書によると、想定した地震より最大で2倍の揺れでも重要な機器類が壊れず、炉心損傷に至らないと評価。津波も想定より1.5〜6.2倍の高さで見舞われても炉心損傷しないとしている。炉心の冷却に欠かせない全交流電源が喪失しても、電源車の活用などで炉心損傷に至るまでに余裕があるとした。

 これらの原発の数値は、今回妥当と判断された関西電力大飯3、4号機と同水準の数値が多い。深野弘行・保安院長は「原発ごとに対応できるかをきちんとみる」としているが、他原発で「妥当」を否定するような材料は見当たらない。

 国際原子力機関(IAEA)は今月23〜31日に来日し、大飯原発3、4号機の結果を例に、日本のストレステストの手法の妥当性を評価する。その後、内閣府原子力安全委員会が保安院の結果を確認した上で、野田佳彦首相と、藤村修官房長官、枝野幸男経産相、細野豪志原発事故担当相の3閣僚が、地元の合意を得ながら再稼働の可否を判断する。

 現在、54基ある原発のうち定期検査などで停止しているのは49基。残りの5基も4月末までにすべて定期検査入りで停止する。再稼働がなければ、発電量の3割を占めていた原発がゼロで今夏を乗り切らなければならず、「逼迫(ひっぱく)度合いは節電で乗り切れるレベルではなくなる」(経産省幹部)懸念が強い。

 原発の再稼働がない場合、国家戦略室の試算では、昨夏並みの暑さならば東京電力管内で13.4%、関西電力管内で19.3%の供給力不足に陥る。政府は省エネ機器導入などを促す政策を進めているが、「効果は不明」(経産省幹部)という。野田首相は「(再稼働を)お願いしないといけないときは、経産相なり、私なりが直接行って、首長や住民の皆さんに説明することが最後には必要だと思う」と述べ、自ら地元の理解を求めに行く考えを示している。

 大飯原発が立地する福井県の西川一誠知事はストレステストについて「シミュレーションに過ぎず、机上の調査だ。結果を原発再稼働の判断にどう生かすかという基準も不明確で、原発再稼働の判断材料とするのは不十分」と繰り返してきた。経産省幹部は「最後は政治判断しかない」としている。【野原大輔、安藤大介】

毎日新聞 2012年1月18日 23時22分
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20120119k0000m040105000c.html
posted by 霧山☆修一朗くん at 23:39 | 東京 晴れ | Comment(0) | 原発事故 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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